これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2013/10/29 ガラパゴス名古屋

名古屋大学医学部は、東海地方随一の名門医学部である。 東海地方を中心に多数の関連病院を抱え、また、東海地方においては「名大卒」の肩書は エリートである、優秀である、ということの証明とされる。 すなわち、幸いにして名大医学部に入れた我々は、特に重大な失敗をしない限り、 将来の安泰が保証されているといえる。 ついでにいえば、名大病院の医師には、名大出身者が多いようである。 これに加えて名古屋の土地柄もあるのかもしれないが、名大医学科、あるいは名大病院は、非常に保守的であるように思われる。

講義の際に、臨床的な問題について「当院では、このような処置をしている。」というように、 名大病院における標準的治療を説明する教員がいる。 名大の流儀を教えること自体は悪くないのだが、その場合、全国的な傾向、あるいは世界的な流れも説明するべきではないか。 我々が将来、名大病院や、いわゆる関連病院でしか働かないのであれば、名大の標準だけ知っていれば、一応、勤務に支障はない。 しかし、我が名古屋大学医学部は、東海地方に臨床医を供給するのみならず、 広く日本や世界に向けて人材を供給する名門大学であり、また、先端的医療を開拓する研究機関でもある。 名大の流儀に拘泥するような狭小な視野を持っているのでは、よろしくない。

一方で、こうした閉鎖的な名大の文化に対してチクリと苦言を呈する教員もいる。 たとえば、ある分野について、東海地方が非常に時代遅れな診療を行っていることを講義中に批判した教員がいた。 また、名大医学科の卒業生が、「名大卒」の看板に頼って研鑽を怠り、向上心に乏しいことを婉曲に批判した教員もいた。 たぶん、名大の保守的な文化に懐疑的な勢力は、少なくないのだと思う。 あと十年もすれば、ガラパゴスには外来種が導入され、惰眠を貪っている固有種は淘汰されるのではないか。

教員の中には、確かに、名大医学科を改革しようと努力している人々がいるのだ。 問題は、それに応えられる学生が、どれだけいるかということである。 目先の課題にとらわれず、長期的、大局的視野で、学業に勤しむ必要があろう。


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