これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2013/11/07 ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群とは、腎臓において本来は毛細血管から漏出しないはずのタンパク質が 何らかの事情により尿中に移行してしまうことに起因する症候群である。 臨床医学の教科書によると、典型的には、ネフローゼ症候群の患者は全身性の浮腫を来し、体重が増加するという。 その理由については、血漿膠質浸透圧の低下により、水が血漿から間質へと移行するため、とする説明が一般的である。 この説明にケチをつけようとしているわけではないが、しかし、この説明では不十分であると思う。

単純に考えれば、ネフローゼ症候群により体重が増加するというのは、奇異なことである。 血漿から間質に水が移行するといっても、あくまで血漿の浸透圧は正常と同じか低いはずである。 また、蛋白質が尿中に漏出するのだから、尿の浸透圧は正常よりも高くなる。 それならば、水の受動的な再吸収は抑制されるわけであるから、尿量は増加し、総体液量は減少し、 従って体重は減少するはずではないか。

ネフローゼ症候群で体重が増加するというのは、何かの間違いではないのか。 仮に臨床的にそのような事例が多数みられるとしても、それは何か 別の疾患なり症候群なりが、高頻度でネフローゼ症候群に合併しているためではないだろうか。

この疑問に対し、『ハーバード大学テキスト 病態生理に基づく臨床薬理学』は明快な回答を与えている。 どうやら浮腫が生じるよりも先に、腎臓におけるナトリウムイオンの保持が亢進しているらしい、というのである。 ナトリウムイオンが保持される機序や生理的意義は不明瞭だが、とにかく、 そのように解釈すれば、はじめて、臨床所見を合理的に説明することができる。

ハーバードは、さすがに名門である。

2013/11/08 語句修正

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