これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2013/12/25 Merry Christmas (小児の手術について)

以前にも書いたが、私が初めて急性虫垂炎を患ったのは小学校三年生の年末であったと思うので、今からちょうど 22 年前のことである。 その日の夕食は私の大好きなエビフライであったが、私がほとんど食べないため、母は「これはおかしい」と思ったらしい。 近くの内科医院を受診し、急性虫垂炎だろうとの診断を受けて、近くの多摩丘陵病院に入院した。 幸い、このときは化学療法により軽快した。 しかし次の春休みに虫垂炎が再発し、切除手術を受けることになった。 初回に私を担当した医師が、二回目の入院時には家族でのスキー旅行をキャンセルして私を診に来てくれたことも、以前に書いた通りである。 たかが虫垂炎のために、とは思うのだが、私は、あの人こそが医師の鑑であると考えている。

今回の話題は、小児の手術についてである。 当時の私は、麻酔というものをよくわかっておらず、手術はなんとなく怖い、いっそ全身麻酔して欲しい、などと言った。 しかし母から、全身麻酔とは恐ろしいもので、そのまま目が醒めなくなってしまうこともあるのだ、と脅かされて、局所麻酔での手術に納得したのである。 とはいえ、常識的に考えて、目が醒めていて意識のある状態で腹を切り内臓を取り出すなど、とても考えられない。 もし手術中に動いてしまったら、どうするというのだ。 たいへん気になったが、私はとても謙虚なシャイボーイであったから、医師や看護師に詳しく問うこともできず、自ら想像力を膨らませて解決するしかなかった。

そこで私が妄想により得た結論は、局所麻酔であっても、睡眠薬のようなものを併用するか、あるいは麻酔に催眠作用があるか何かの事情により、 結局は患者が眠った状態で手術をすることになるのだろう、というものであった。 実際にはそんなことはなく、患者はしっかりと覚醒した状態で手術されるのだが、プラシーボ効果は絶大であり、 私は麻酔薬か何かを注射されると、たちまち意識を失い、眠ってしまった。

私は朦朧とした意識の中で、ストレッチャーの上で看護師に何かをされた場面を覚えているが、何をされたのかは、はっきりしない。 手術室の中では、一度だけ少し意識を取り戻したが、無影灯の光をぼやっとみただけで、他には何も覚えておらず、すぐに再び眠りに落ちてしまった。

そんなわけで私は手術中ずっと寝ていたのだから、とてもおとなしかったようである。 ふつう小児の手術では、患児は嫌がり、泣いたり騒いだりして大変らしいのだが、私は実に神妙であったため、 かえって医師だか看護師だかに、「この子、大丈夫かしらん」などと心配されたらしい。


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