これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2014/02/14 St Valentine's Day (不誠実な報道)

朝日新聞に「アスピリンで大腸ポリープ抑制」という記事が載っていた。 いつものことながら、こうした学術的な記事には、だいたい、不必要な煽り文句がついている。

今回の発表でいえば、「大腸がんの予防につながると期待される」という文言が余計である。 大腸ポリープは、慢性炎症を背景に生じると推定はされるものの、詳細な形成機序は不明であり、 その解明につながるという意味で、この結果は「大腸癌の予防につながる可能性がある」ぐらいには言える。 だが、大腸ポリープの予防目的でアスピリンを常用するのはリスクが大きいし、「期待される」は、言いすぎである。

研究者は、予算獲得の都合もあるから、自分達の研究の価値を誇大に宣伝しがちである。 それに対して、新聞記者はだいたい素人であり、研究者の言うことをあまり正確に評価できず、こうした煽り文句をそのまま書いてしまうのではないか。

ひょっとすると最近は変わりつつあるのかもしれないが、一昔前には、新聞社においては政治部や社会部が花形であり、 新聞記者たるもの政治や社会に精通していなければならぬ、という風潮があったらしい。 それ自体がおかしいとは思わないが、技術立国日本の新聞記者の中に、物理学や化学や生物学において博士号を取得している人物が、いったい、どれだけいるのだろうか。


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