これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2013/09/09 三つ子の魂 百まで

あまり良くないことだとはわかっているのだが、私は、 いささか協調性に乏しく、血の気が多いようである。

医学部に行くと決めた時、私は、これからは他人と争わず、おとなしく生きていこう、と考えた。 なにしろ、医学部である。 権威主義に凝り固まった教授と、それに媚びへつらう学生がワンサカといるに違いない。 そんな場所で、これまでと同様の振る舞いをすれば、たちまちにして睨まれ、つまみ出されてしまうだろう。 もはや私には、教授に逆らわず、犬のように忠実に生きていくしか、道はないのだ。 そのように考えていた。

ところが予期せぬ形で、私には戦う意思は全くなかったのに、教員との衝突が起こってしまった。 医学部編入対策の予備校 (KALS) 時代のことである。 事件が起こったのは、鹿児島大学医学部編入学試験の解説講座において、 平成 22 年入試問題 I の設問 6 を扱った時であった。 同大学の過去問は公式サイトから 閲覧することができる。

講師は、この問題に対して、Na+,K+ポンプの活性が低下するから、という方向で説明をした。 私は、プラトーが短くなっていることと活動電位の大きさが変わっていないことから、むしろ Ca2+ ポンプの関係ではないかと考えた。 それ故に、講師の説明に納得がいかなかったし、それが顔に出ていたのだろう。 講師は最前列中央に座っていた私に発言を促し、私は Ca2+ の関係ではないかとの意見を述べた。 それに対し講師は、Ca2+ ならばプラトーの短縮を説明できると認めた上で、 しかし、これは Na+,K+ ポンプの影響であると断じた。 私はなお不服であったために、講師の「納得いきませんか」という問いに対し「はい」と答えた。 すると講師は怒り出し「膜電位はナトリウムやカリウムで議論するのが常識である」と述べ、 「信じてもらえないなら講義する意味がない、やめる」などと言い、 講義を中断して教室から退出するそぶりをみせた。 私は、これは講師控室まで謝りに行かねばならないのか、と思った。 しかし講師は実際に退出する前に、私に対し「それ(講義をやめること)で良いか」と問うた。 やむなく、私は「申し訳ありません」と謝罪し、 「膜電位はナトリウムやカリウムで議論するのが常識だというのは、おっしゃる通りです」と述べた。 これによって、一応、その場は収まり、講師は怒りを露にしつつも、講義を続けた。 私は、その後の休み時間に荷物をまとめて帰宅し、以後、講義には出席しなかった。

私の最後の発言には、「それが常識ではあるが、本件については常識を適用できない」という意味を含めてあった。 また、このとき私は「おっしゃる通りだと思います」ではなく「おっしゃる通りです」と言ったように思う。 この辺りの言い方は実に生意気であったが、 私は、そういう言い方をできるほど自分がよく理解しているという自信を持っていたのである。

蛇足であるが、このときの私の謝罪は、他の受講生に対するものであり、講師に対して謝ったつもりはない。 私は講師に対して、何ら悪いことはしていない。 しかし結果として講義の進行を止め、講師を怒らせて授業の品質を下げてしまったことについて、 受講生に謝罪したのである。

思えば、それ以前にも、私は講師の不興を買っていた。 講師の説明に化学的観点から誤りがあると思われたのでコッソリ指摘した所、 講師氏は「いや、これで合っている」と言い、なお私が抵抗すると 「私が、そうだと言っているのだ (だから黙って認めろ)」と強弁された。 意味がわからない。

学術的な話をしているときに、権威を持ちだして相手を黙らせようとするのは、いかがなものかと思う。

2013/09/24 修正

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