これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
名古屋大学医学部医学科には、一学年あたり百余名の学生がいる。 そのうち二十名以上は地元の東海高校出身者であり、 愛知、岐阜、三重、静岡の東海地方出身者を合わせれば八割以上になるであろうか。 卒業生のほとんどは医師になるのだが、初期臨床研修も東海地方で受ける人が多いらしい。
残念ながら、このような、地元から来て卒後も地元に留まる、という人の流れは、 典型的な地方大学の特徴であるといわざるを得ない。
地元を愛するのは、たいへん、結構なことである。 将来は地元で就職したいと考えるのも、すばらしい。 そうして身近な所から社会を良くしていくことで、ひいては日本や世界が住みよくなるのだ。
だが、どうして、徹頭徹尾、地元に留まろうとするのか。 学生時代ぐらい、あるいは初期臨床研修ぐらい、遠方の見知らぬ土地で過ごそうと、なぜ思わないのか。 東京出身ではあるが、その後は京都、名古屋と移動している私からすれば、いまいち、よく理解できない。
女子学生であれば、娘を遠くにやりたくない、などと、親が駄々をこねたケースがあるかもしれぬ。 経済的に苦しく、親元から通いたいという例もあるだろう。 それらは理解できなくもないが、親と喧嘩して家を飛び出すにせよ、 奨学金と称する借金によって学資を賄うにせよ、やり方は、いくらでもあったはずであり、 地元に留まらねばならない決定的な理由とは考えにくい。
それ以外に地元に留まる理由としては、名古屋大学医学部のネームバリューがあるのではないか。 将来、東海地方で医師をやるならば、やはり名古屋大学の看板が物を言う。 そういう打算の元に、地元・名古屋を選んだ学生が、少なからずいるのではないか。 名古屋大学医学部を卒業し、いわゆる関連病院で研修を受け、 その後も地元の有名病院に就職するというのが、 東海地方におけるエリート医師の典型的なキャリアパスなのである。
率直に申し上げて、志が低い。 安定した有利な条件での就職を希求するあまり、大事なことを、何か忘れてはいないか。 せっかくの優秀な頭脳の、使い方を間違えてはいまいか。
今さら過ぎたことを言っても仕方はない。 しかし、せめて初期臨床研修ぐらいは、関連病院でなく、外の世界で受けようではないか。