これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2013/06/05 センセイという二人称

「医師」と書いて「センセイ」と読むのが、医療業界の慣例らしい。 そのことにも疑問を感じるのだが、いくらなんでも、学生に対して二人称として「センセイ」と呼ぶのはいかがなものか。 臨床のセンセイ方の中には、授業の際に「学生諸君」という意味で 「先生ら」などと呼びかける人がいるが、どうにもなじまない。

そもそも、患者が医師に対して「センセイ」と呼ぶのも、私はいかがなものかと思う。 センセイという呼び方は、相手を上に持ち上げる言い方である。 昔の医療は、医師が上で患者が下という上下関係が暗黙のうちに定められていたから、 下の者が上の者に対し「センセイ」と呼びかけるのは、まぁ、自然であったといえなくもない。 しかし現在では、医療機関側が患者を「患者さん」と呼び、場合によっては「患者様」と呼ぶことすらある。 医療機関と患者の関係は対等か、あるいは形式的には患者が上かもしれないような状況にあるのだ。 その中で、なぜ患者が医師を「センセイ」などと呼ぶのか。 単に「医師」とか、せめて「お医者さん」ぐらいで良いではないか。

誰しも、他人から「センセイ」などと呼ばれれば良い気分になるであろう。 自分が偉くなったかのように錯覚もする。それを思えば、やたらと「センセイ」と呼ぶのは実に不気味な習慣である。 そのような気持ち悪い習慣は世間には存在しないし、医療の世界にそのような習慣が存在すべき合理的事情も存在しない。 医者の世界がいかに世間から乖離しているかを示す好例といえよう。

私自身、他の学生に対し「先生」という敬称をつけて呼ぶことがあるが、これは上述のものとは異なる。 単に、その人物に対する一定の敬意と一定の諧謔を込めているつもりであり、 工学部時代から用いている表現である。 しかし、医学部では誤解を招きかねないので、やめた方がよいのかもしれないとも思っている。

2013/07/04 追記
2013/09/09 タイトル追加

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