これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
工学部時代の私は、経済学と生物学に一定の関心を持っていたが、いずれも特にまとまった勉強はしなかった。 今は、ヒトに偏っているとはいえ、生物学には足を踏み入れたわけであるが、経済学については全く触れていない。
以前、マルクスの資本論を少しだけ読み、その論理の精巧さには感心したが、 そもそも論理が「財物には普遍的な価値がある」というような暗黙の仮定から出発していることが残念であった。 もし先まで読み進めれば、もしかすると、この仮定は撤廃されるのかもしれないが、 私は最初の仮定に納得できないまま読み進めるのが苦痛であったため、挫折してしまった。 論理はわかるが根本の仮定が納得できないという理由で挫折したという点では、 マルクスの理論も、純粋数学も、量子力学も、私にとっては同列である。
私は現在、二つの経済学上の問題について、疑問を抱えている。
一つは、経済学を少しだけかじった人がしばしば口にする 「無駄遣いすることで経済が良くなる」という説である。 いったい、いかなる理論的根拠により、このような説がとなえられているのだろうか。 いわゆる無駄遣いが行われ、金が世の中をグルグルと回れば GDP が高くなる、という理屈は概ね理解できる。 しかし、GDP の高さをもって経済の具合を評価することは、はたして妥当なのか。
経済学の目的は、究極的には、人々がより多くの財やサービスを手に入れられるようにすることであろう。 人々が多くの財やサービスを手にしていれば GDP は高い、という関係は概ね成立するにしても、 はたして逆は真だろうか。 国内の生産力が一定、という条件の下で、はたして、無駄遣いの量は、 各人が手に入れられる財やサービスの量を増やすのだろうか。
もう一つの疑問は、どうして日本は、こうも物質的に豊かなのか、ということである。 結局は、資本主義の機構を利用して、発展途上国など諸外国から 財やサービスを搾取しているからに過ぎないように思うのだが、どうなのだろうか。
なかなか、経済学の良い入門書に巡り合うことができない。