これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2013/09/24 医学部のための統計学 (3)

この場合の T 検定とは、大腸癌患者と健常者で、いずれも血中 B 濃度は正規分布に従うという仮定の下で 「大腸癌患者における血中 B 濃度は健常者の血中 B 濃度と異なる平均値の正規分布に従う」という命題の 真偽を調べることである。

大腸癌患者の血中 B 濃度の平均が m1, 健常者の血中 B 濃度が平均 m2 であるとき、 もし両群が同じ分布に従っているのであれば、m1 - m2 = 0 となるはずである。

ここが、検定の理論の一つの山場である。 検定の結果として「両群が異なる分布に従っている」という結論が得られることはあっても、 「両群が同じ分布に従っている」という結論が得られることは、決して無いのだ。 すなわち「完全に厳密に一致しているもの」と「ほんの少し、ごく僅かだけずれているもの」とを、 実験的に鑑別することは不可能なのである。 ただし「差があるとしても、それは最大いくらぐらいであるか」を推定することはできる。 この話は、また後日になるだろう。

p 値については、何となく知っている人は多いと思われるが、 厳密に理解している人は少ないように思われる。 このあたりの議論から、いよいよ確率論の深淵なる奈落の底が垣間みえるのである。

2014/04/02 語句修正

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