これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2013/09/27 子宮頸部の上皮内癌

子宮頸癌は、子宮頸部にできる悪性腫瘍である。 子宮は体部と頸部に分けて考えられ、おおまかにいえば、胎児がいる部屋の部分が体部であり、 体部と膣をつなぐ部分が頸部である。 なお、子宮頸部のうち、膣側に突出している部分を特に子宮膣部と呼び、 それ以外の管状の部分は頸管と呼ばれる。

さて、子宮頸癌は、ふつう、上皮内癌と呼ばれる状態から悪化して生じる。 上皮内癌は、ほとんど癌細胞と同じ悪性腫瘍様の細胞の集塊であるが、 それが基底膜を越えずに、上皮、すなわち表面の部分に留まっているものをいう。 これが基底膜を越えて奥の方に入っていけば、浸潤癌と呼ばれるようになり、これが子宮頸癌である。 なお、この説明はあくまで素人向けであり、病理学的に厳密にいえば誤りであることには注意されたい。

さて、日本では、子宮頸癌や子宮頸部の上皮内癌に対しては外科的な処置が施される例が多い。 すなわち、子宮の一部、もしくは全部を切除して、癌の広がりを防ぐのである。 一方、米国では化学療法や放射線療法が適用される例も多いらしい。

ガイドラインには明記されていなくて困るのだが、ここでいう放射線とは、X 線やγ線のことであるらしい。 調べていて不思議に思ったのは、どうしてβ線を使わないのだろうか、ということである。 上皮内癌であれば、体の表面付近に癌細胞は局在しているわけだから、β線や、場合によってはα線のような、 飛程の短い放射線を使えば正常組織への影響を抑えて効率的に癌細胞を死滅させることができるのではないか。

加速器を用いてヘリウム原子核よりも重いイオンを照射する、いわゆる重粒子線治療は研究されているようだが、 β線の利用については、どうなのだろうか。 あるいは経済性の問題があるのかもしれないが、他に何か、理由があるのだろうか。よくわからない。


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