これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2013/09/27 「治る」

「治る」という語の意味は、時として難しい。 感冒や軽度の外傷のような、ほぼ完全に可逆的な疾患の場合には、 「治る」とは「元通りの状態に戻ること」と考えて良いだろうから、問題は少ない。

しかし悪性腫瘍など不可逆性の疾患については、どうであろうか。 たとえば胃癌の患者について、胃の全体を切除して癌細胞を完全に取り除いた場合、 これは「治った」と言って良いのだろうか。

多くの医師は、これを「腫瘍を完全に摘出したことにより、治った」と言うのではないか。 しかし患者は胃を完全に失い、もはや以前と同様の食事をすることはできない。 重大な後遺症が残るわけである。 転移や再発の可能性を別にすれば、確かに癌ではなくなったわけだが、完全に健康な状態になったわけでもない。 これを「治った」と主張するのは、私には、どうも納得できない。

従って、私は「治る」という言葉を極力使わないようにしている。


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