これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2014/10/02 名大医学科の限界

たぶん誤解されがちであるから改めて強調しておくが、私は名古屋大学が大好きである。 医学科の学生の中で私ほど強い愛校心を抱いている者は他にいないであろう、と自信を持っているほどである。 私が名古屋大学医学部の悪口を言うときは、それは間違いなく、愛するが故の批判である。 たとえば私は大阪大学に対して何らの愛着も抱いていないから、仮に大阪大学の学生が不道徳な振る舞いをしても、私は、それをイチイチ批判しない。

さて、名大医学科では、学生有志で集まって『ハリソン内科学』の輪読会を行っていた。 もともと参加者の少ない集まりではあったが、脱落者が続出し、とうとう解散やむなし、という状態になってしまった。 これまで努めて参加してくれていた友人諸君には感謝している。

名大医学科には、参加者を公募する形の学生自主勉強会は少ない。 エラい先生に指導してもらう、あるいは監督してもらう、という形式の勉強会はあるようだが、学生が自主的自律的にやろう、という意欲は乏しいのである。 本来、大学は学生が自ら学ぶ場であったはずなのに、名大医学科には、そのような気概は皆無なのである。 名古屋大学は愛知医学校から始まったのであり、すなわち医学部こそが名古屋大学の中核であるにもかかわらず、 その自主自律の精神を医学科が率先して放棄してしまったことは、皮肉であると言わざるを得ない。

あまりに近視眼的なのである。 学生の中には「研修医になってすぐに役立つ知識や技能」については、それなりに関心を示す者もいるが、 『ハリソン内科学』のような「すぐには役立たない、マニアックで学究的な内容」に関心を持つ学生は稀なようである。 すぐに役立つ知識や技能を詰めこめば、もちろん、初期臨床研修医になってからは無敵であり、大活躍し、同期の研修医から羨望や尊敬を集めるであろう。 だが、基礎学識に裏付けられない臨床知識は発展に乏しく、まさに砂上の楼閣である。 そのことを、教授陣の多くが指摘しているにもかかわらず、どうやら馬耳東風であるらしい。 このように長期的視野を欠いていることは、試験対策に特化してしまった医学科生の最大の弱点であるように思われる。

もちろん、こうした名大医学科の現状に多少の危機感を覚えている学生は少なくないようである。 しかしそれでも、医師国家試験合格率などを根拠に、「我々は旧帝国大学たる名門、名古屋大学なのだ」と思い、 「北陸の某地方大学ごときには負けない」などと、密かに考えているのであろう。 これがトンデモナイ勘違いであるということを、いずれ、彼らは思い知るであろう。


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