これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2014/09/27 医療倫理

事実であるかどうかは知らないが、先日、ある友人から、次のような噂を聞いた。 臨床実習の際に某教授が、とある社会的に繊細な問題を伴う先天性疾患について、「名大医学科の学生の中にも患者がいる」という趣旨の発言をした、というのである。 もしこれが、たとえば感冒であるとか、急性虫垂炎であるとか、誰でも患う可能性があるような疾患であるなら問題はない。 しかし、先天性で社会生活に影響があり、その疾患について知られることを望まず、秘匿して生活している患者も少なくないとあれば、そうはいかない。

教授は個人名を挙げたわけではないというから、個人情報保護の観点からは、重大な問題はない。 たぶん、教授は「身近な所にもいるよ」ぐらいのつもりで発言したのであろう。 しかし、それであれば罹患率を示して例えば「三学年に一人ぐらいはいることになる」などと言えば充分なのであって、「現に患者がいる」とまで言う必要はない。 「学生の中に実際に患者がいるかどうか」を、特別の必要なしに言及するのは、医療倫理の観点からは言語道断である。 もし、本当に教授がそのような発言をしたのであれば、医師として、医学部教授としての、資質を欠くと言わざるを得ない。


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