これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2014/10/30 おつかれさま

学生間の挨拶で、しばしば「おつかれさま」というものを聴く。 どうやら、これは `Hello' の意味で使うこともあれば `Good bye' の意味で使うこともあるらしい。 よく知らないのだが、就職活動用のマナー本の類では、「ごくろうさま」は目下の相手に使うものであり、 「おつかれさまでした」は目上の相手に対して使っても良い、ということになっているらしい。 ただし、そのような記述が、一体、どのような根拠に基づいてなされているのかは、知らない。

古来の礼法では、目下の者が目上の者に対してねぎらいの言葉をかけるのは無礼にあたる。 すなわち「おつかれさま」も、目上の相手に対して用いるのは不適である。 目上の相手に対して何かを言いたいのであれば、「失礼します」とか「ありがとうございました」などを用いるべきであろう。 昨今では、こうした礼法は乱れに乱れているために、あまり気にしない人が多いようであるが、中にはこだわる人もいるので、注意が必要である。 何より、こうした言葉を適切に使い分けるのは、紳士淑女たる者が当然に身につけているべき教養の一部である。 相手が誰であろうと、どのような状況であろうと、同じ「おつかれさま」という言葉で済ませてしまうのは、あまりに下品である。 それに、朝一番に顔を合わせて「おつかれさま」とは、一体、何事なのだろうか。あまりに無思慮な挨拶ではあるまいか。

些細といえば些細なことではあるのだが、そうした細かな点に疑問を抱き、正していくことで学問は発展するのであって、それは医学も例外ではない。 たとえば、手術を受けた患者は、たいてい、一時的に尿が出なくなる。 そこで輸液を行って体液量を増加させ、尿が出るのを待つのがふつうの術後管理である。 しかし、なぜ、尿が一時的に出なくなるのか。 外科学の教科書には、「サードスペースに体液が貯留する」などと書かれているが、これは論理的に筋の通った説明ではない。 これを「そういうものなのか」と無批判に受け入れてしまう者は、あまり良い医師であるとは言えない。


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