これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2014/09/22 フラジャイル

以前に参加した、日本病理学会中部支部 夏の学校で、ある人から「病理を題材にした漫画がある」という話を聞いた。 調べてみると、月刊アフタヌーンに連載されている「フラジャイル」というものらしい。 私は、定期的に漫画雑誌を購読する習慣はないのだが、これは面白そうであったし、 単行本が出版されるのは先の話になりそうであったで、電子版のバックナンバーを購入して読んでみた。

「病理漫画」という触れ込みではあるのだが、どうやら病理部と臨床検査部が合体している病院、という設定であるらしく、初回には病理診断が登場しなかった。 しかし病理診断と組織学的診断は同義ではなく、臨床検査所見あるいは画像所見、病歴などは全て病理診断の一部であるから、 これは病理漫画の初回として、実に理想的であるといえよう。 一方で、神経内科に医者がたくさんいるのに、病理部に医師一人と技師一人しかいないというのは非現実的だ、という批評や、 主人公の病理医が喫煙をするのはいかがなものか、という批判もあるらしい。 そうした若干の違和感はあるものの、札幌医科大学附属病院病理診断科・病理部の長谷川医師が監修しているというだけあって、たいへん、面白い。 私は病理医の卵になる前の卵母細胞に過ぎないから、あまり偉そうなことは言えないのだが、 この漫画は、臨床病理の魅力を余す所なく、かつ不適切な誇張なしに、伝えているように思われる。

作中で指摘されているように、我々は、患者に感謝されることもなく、患者が治って退院していく姿を見送ることもなく、そして治療における決定権もない。 しかしながら、病理学に対する愛と、病理診断に対する誇りを持って、臨床医の診断を支え、縁の下から患者を守ることが、我々の使命である。


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