これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
私は常々、名古屋大学医学部医学科に対する批判を述べてはいるが、ひょっとすると、私は名大医学科生を過大評価しているのかもしれない。 例えば9 月 19 日には、彼らは楽に稼げる道を選ぼうとしているのではないか、と述べた。 しかし、よくよく思案してみると、彼らがそのようなことを考えているとは思われない。 実際のところは「何も考えていない」のではないか。
医学科生の多くは何らかの部活動を行っており、先輩から、試験対策やら病院選びやらの「ありがたい話」を聞いているらしい。 あるいは、親が医者だという学生も多いらしく、医者とはどのような職業か、ということを、常々、親から聞いていると思われる。 もし、こういう先輩や親が立派な医師ばかりであるなら問題ないのだが、遺憾ながら、 世の中には倫理観を欠き、あるいは学識に乏しい医者が、少なくないのではないか。
医者の仕事を、「診断基準や標準的治療法を記憶し、ガイドラインに沿って診療すると」だと勘違いしている者は、世の中に少なくないようである。 あまり具体的なことを述べると障りがあるため詳細は割愛するので関係者以外にはわかりにくいだろうが、名大病院にも、明らかに見識の低い医師が少なくない。 ガイドラインの冒頭には、ほぼ必ず、「ガイドラインは医師の裁量を制限するものではない」という旨の注意書きがあるのだが、 現実に、自己の責任と学識によってガイドラインに沿わない診療をできる医師は、多くないものと思われる。 このことを危惧する声は識者の間では大きいらしく、専門医制度改正を巡る議論の中でも、 マニュアル通りの診療しかできない医師が「専門医」の肩書を振りかざす事態を懸念する意見が強いという。
何も考えていない学生は、そうした識者の危惧にもかかわらず、眼前の試験に合格することに注力し、上司から咎められないように、責任逃れの診療を行う医師になるであろう。 しかし「ガイドラインに従った」ということは、その診療行為を正当化する根拠にはならないことを、我々は忘れてはならない。 手塚治虫の「ブラックジャック」をはじめとして、医療漫画や医療ドラマをみて「カッコイイ」と感じる学生は少なくないと思われるが、 彼らの、こうした保守的な姿勢は、そのカッコよさとは対極にあるということを、はたして、彼らは認識しているのだろうか。 それとも、ひょっとすると、経験さえ積めば立派な医師になれるとでも思っているのだろうか。
ところで、9 月 16 日の毎日新聞配信記事によると、兵庫県立淡路医療センターで心電図異常アラームに看護師らが気づかずに放置し、 男性が死亡した事故について、県が遺族に解決金 300 万円を支払うことで和解したという。 これについて、思う所のある医師や学生は、少なくないであろう。