これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2014/09/16 神通川に呼ばれて (3)

富山の医療は、危機的な状況にある。 県下唯一の医学部である富山大学医学部からは、毎年 100 名程度の卒業生が輩出される一方、 県内で初期臨床研修を受ける者は、県外の大学出身者も含めて五十余名であるという。 しかも、その大半は富山大学出身者または富山県出身者であり、特に縁のない者は十名にも満たないらしい。 もちろん、富山県は医師で溢れているわけではなく、慢性的に人手不足であるから、 県厚生部医務課などが中心となって、医師確保に苦心している。

こうした状況は、富山県に限らず、福井県や鹿児島県をはじめとして、多くの地方で共通しているものと思われる。 従って、医学部編入においても、少なからぬ地方大学は、臨床医として地元で活躍してくれそうな人材を優先して選ぶのではないか。 そうした中で富山大学は、別の記事に書いたように、病理志望を明言する私に対し 「研究の道に進むのは結構なことであるが、今から病理と決めてかからずに、免疫学とか、ウイルス学とか、幅広くみていくと良いだろう」と述べた。 他大学の面接で、基礎研究志向であることを述べては否定され続けてきた私にとって、これは、まったく予想もつかない言葉であった。 この一事が、私の進路を決めたといって良い。

名古屋大学の諸君は、いわゆる関連病院を見学して、熱烈な勧誘を受け、あたかも自分が必要とされているかのように錯覚していることだろう。 しかし、彼らが必要としているのは単なる人手であって、別に、どの学生であろうと、同じことなのである。 実際、彼らには全ての学生が同じ顔にみえているのであって、それ故に、部活動は何をやっているか、などという、 およそ医学とは何の関係もない質問によって、個々の学生を区別しているのである。

富山大学は、新しい風を必要としている。 編入試験合格者の顔ぶれをみても、およそ医学や生物学とは関係のない、異色の経歴の持ち主を敢えて選んでいるのは、富山大学ぐらいのものである。 富山はやがて、日本の医学の中心となるであろう。 どうせ就職するなら、本当に自分を必要としてくれる所に、行きたいとは思わないか。 自分にしかできない仕事がある場所で、働きたいとは思わないか。


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