これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2014/09/14 神通川に呼ばれて (1)

思うところあり、先日、富山駅前の某ホテルで開催された富山県臨床研修病院合同説明会に参加した。 私は、病理医志望であることや、既に意中の病院があることを明言した上で、富山大学や、いくつかの市中病院のブースで説明を受けた。 合同説明会は 16 時から 20 時まで行われ、その後に帰宅することは困難であったため、 当日は富山で一泊し、翌日に富山市内を散策してから特急「しらさぎ」で約四時間をかけて、名古屋に戻った。

富山駅の近くには、富岩運河環水公園 (ふがんうんがかんすいこうえん) という公園があり、ここから富山港まで、運河を下る遊覧船が運行されている。 私は、こうした乗り物が好きなので、せっかくだからと、これに乗船してみた。 この遊覧船はボランティアによるガイドつきであり、そのガイドが言うには、この船は屋根に太陽光発電パネルを装備しており、 電気モーターで動くために二酸化炭素を排出せず、環境負荷が軽いのだという。 もちろん、これは詭弁であり、太陽光パネルだけでは動力をまかなうことができないから、実際には商用電源に大きく依存している。 太陽光パネルは製造時に莫大な二酸化炭素を放出するし、商用電源は火力発電所において化石燃料を大量消費している。 すなわち、この船は「この場では」二酸化炭素を放出していないが、「別の場所で」大量の二酸化炭素を放出しているのであって、特に環境負荷が軽いわけではない。 しかしながら、こうした欺瞞に満ちた説明に対して、ナルホド、といわんばかりに頷いているツアー客が少なからずいたために、 私の心中では怒りが沸々とわいてきたが、さすがに、それを公然と口にするような大人気ない振舞いは、慎んだ。

私は、無計画にも帰りの特急の時刻を確認していなかったため、「しらさぎ」は 14 時 03 分の次が 16 時 11 分であるにもかかわらず、 14 時 20 分頃に富山駅に到着してしまった。 そこで、近くを流れる神通川を眺めて待ち時間を過ごすことにした。 富山の医師として、越中の苦楽を司ってきた神通川をよくみておくことは重要である、と考えたのである。 神通川には「神通大橋」という大きな橋がかけられており、これは富山駅から徒歩 10 分ほどの地点にある。 私は、これを東から西に渡り、また西から東に渡り、富山駅に戻った。 神通川は、私が想像していたよりも、雄大であった。 この河は古来、氾濫を繰り返してきたらしく、明治 32 年から 36 年にかけて流れを大幅に変える治水工事が行われるまで、幾度となく周辺の集落を襲ってきたらしい。 その治水工事について記した表示板が神通大橋西詰にあるのだが、そこに「明治三十二年 (一八九年)」と書かれていたことが、いたく印象的であった。

2014/09/15 語句修正
2014/12/24 語句修正

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