これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2014/08/27 膠原病

病院見学で病理部門を訪れた際には、私は教授らに対し、病理診断のあり方に対する疑問を提示したり、 病理学上の問題に対する意見を質問の形で投げかけてみたりした。 私について知ってもらうには、学問の話をするのが最も簡単であると考えたからである。 北の名門大学では、私は膠原病に関する疑問を発した。

膠原病は、結合組織など全身の組織に炎症を来す疾患群のことであり、 具体的には全身性紅斑性狼瘡 (Systemic Lupus Erythematosus; SLE; 「全身性」をつけずに「紅斑性狼瘡」と呼ぶのが普通である) や皮膚筋炎などである。 これらは原因不明な上に根本的な治療法も知られておらず、糖質コルチコイドなどを用いた対症療法が治療の中心となる。 膠原病においてみられる炎症は、直接的には自己抗体によるものらしく、一種の自己免疫疾患であるとする意見が多いようである。 しかし、膠原病において完全に特異的な、あるいは感度が極めて高い自己抗体は知られていない。 SLE においては抗 DNA 抗体が有名ではあるが、SLE の全てがこれを伴うわけではないし、発症直後には抗 DNA 抗体陰性である例も少なくない。 すなわち、抗 DNA 抗体は SLE から結果的に生じると考えるべきであって、SLE の原因と考えるのは無理がある。

私の想像では、膠原病の本質は自己免疫疾患ではない。 たぶん、ゲノム上の何らかの異常が疾患の本質なのであって、自己抗体の産生は、その結果に過ぎない。 膠原病に癌がしばしば合併するのは、これが理由であって、単に慢性炎症から発癌しているわけではないと思われる。 では、ゲノムの異常は、どこの細胞で生じているのか。それは、私が今後、明らかにしていきたい課題の一つである。

もう一つの問題は、膠原病の分類である。 現行の分類、SLE だとか全身性硬化症だとかは、症状に基づく区分であって、これは疾患というよりは症候群というべきものである。 疾患の本質を正しく認識することで、合理的な分類を新たに構築することができれば、膠原病の根治療法の開発につながっていくであろう。


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