これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2014/08/17 中国地方の名門

私は過日、中国地方の名門医学部附属病院についても、初期臨床研修先として検討するため、見学に訪れた。 こちらは、とりあえず放射線部門を見学し、初期臨床研修を担当する部署からの説明を受けた。

さすが名門であり、放射線部門では MRI や CT などの装置も先端的なものが豊富に揃えられており、指導医の数も多く、見事なものであった。 しかし、名古屋大学附属病院と較べて格段に良い環境であるとまでは思われなかった。 また某北陸地方の大学附属病院に較べると、診療科内の風通しの良さ、すなわち教授と他のスタッフの間の垣根の低さ等については、優れていないように感じられた。

初期臨床研修を担当する部署での説明の際に訊いてみたところ、この大学では初期臨床研修を終えた者のほとんど全ては、 同大学、または、いわゆる関連病院で後期研修を受けるのであり、他大学などに出ていく者は滅多にいない、とのことであった。 というよりも、他大学に転出するという発想がないらしく、「初期臨床研修後の進路はどうなっているか」という私の質問の意味を理解できないようであった。

一部の病院においては、研修医に限らず勤務医が異常な超過勤務を行っているという。 そうした病院は、研修医を「医師免許を有する、比較的安い労働力」として扱っているのであって、それは教育でも研修でもないように思われる。 私は、そういう病院では勤務したくないので、「研修医の超過勤務状況は、実際のところ、どうでしょうか」と問うてみた。 担当者は「社会人としての責任を持って云々」と言い、はっきりとは答えず、はぐらかされてしまった。 しかし、過労死の危険がある水準での超過勤務を、しかも事実上、超過勤務手当なしで行うのは、「社会人としての責任」の域を逸脱している。 すなわち、この担当者は研修に対する学生側の不安に対して無理解なのであって、あまり信頼できない印象を受けた。 これは、名古屋大学医学部附属病院卒後臨床研修・キャリア形成支援センターのセンター長らが、 我々に対し実に誠実に接してくださるのとは対照的である。

また、些細なことではあるかもしれないが、初期臨床研修の応募資格も気に入らない。 名古屋大学や北陸の某大学は「医師免許を既に取得しているが、初期臨床研修を終えていない者」の応募を認めているのに対し、 中国の名門では、少なくとも募集要項上は、次回の医師国家試験受験者に限定している。 すなわち、医師免許取得直後に初期臨床研修を行わず、先に大学院博士課程に進学した者が、その後に初期臨床研修を受ける、というようなあり方を否定しているのである。 こうしたキャリアパスの多様性を認めない狭量な大学を、私は、好かぬ。

結局、同じ牛尾であるならば、 敢えて名古屋を去りたいとは思われず、中国に行くよりは、初期臨床研修を終えるまで名古屋大学に残ろうと思う。

私は今月末に北の名門を見学する予定であるが、現時点では、研修先候補として 1) 北陸の新設大学 2) 名古屋大学 3) 北の名門 4) 中国の名門 の順位で考えている。


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