これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
以前紹介した「フラジャイル」という病理漫画の単行本が、先日、発売された。 もし、この日記を読んでくれている名大医学科の人の中で興味のある人がいたら、ロッカー室の机の上で供覧に付されているので、ぜひ、一読されたい。 もっとも、第 4 話の展開は少し、いかがなものかとは思う。
単行本の帯には「あなたが癌かどうか診断するのは外科医である。○か×か。」と書かれており、たいへん、素晴らしい。 優秀な外科医は 90 % 程度の精度で癌を正しく診断できるといわれるが、要するに 10 % 程度は、どうしても誤診するのである。 これは外科医の技能の問題ではなく、画像や臨床検査に基づく診断の、本質的な限界であると考えられる。 しかし、いくら外科医の過失ではないとはいえ、実際には良性疾患なのに癌と誤診されて手術されるのでは、患者はたまったものではない。 もし病理診断がなければ、そのような誤診に基づく手術が多発し、しかも、その誤診は永久に気づかれない。 そうした不幸な事態を防ぐのが、我々の使命である。
もっとも、「フラジャイル」は病理漫画と称してはいるが、半分は臨床検査漫画である。 病理と臨床検査は、似てはいるが、一応、別の分野であり、大抵の病院では異なる部門が担当しているようである。 たぶん臨床検査医の人々は、いささか苦い顔をして「それは病理じゃねーよ……」と思いながら、この漫画を読んでいるであろう。