これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2014/12/13 勘違いした研修医

日本では、医師の間では、なぜか、経験年数による序列が存在するらしい。 そのため、多くの医師や医学科生は、先輩に対する批判を公には行わないようである。 もちろん、これは全く無意味な慣習であるので、私は、そのような序列に従う気は毛頭ない。

若手医師の中には、残念な勘違いをしてしまった人が少なくないようで、 「学生時代に勉強した内容などは、ほとんど役に立たない。卒業してから学ぶことの方が、よほど重要である。」などという言葉を、しばしば耳にする。 これは要するに「私は、基礎的な学識を必要としない程度の低質な医療しか提供していない」と言っているに過ぎない。 どうして、病理学や薬理学、あるいは内科学や外科学の学術的理解なしに、先端的医療を患者に提供することができようか。

彼らが行っているのは、たぶん、いわゆるマニュアル診療である。 「こういう症状の患者が来たら、こういう検査をする。こういう所見があれば、こう診断する。そして、こう治療する。」 というような膨大なマニュアルを記憶し、あるいは必要に応じて調べ、その通りに実行するのである。 そこには、マニュアルの背景を考察し、批判的吟味を加えるという科学的精神は存在しない。 もちろん、まともな医師は、こうしたマニュアル診療を批判しているし、研修医をマニュアル診療に走らせるような教育体制は疑問視されているのだが、 思考停止してしまった一部の研修医は、まるで自分が何か重大な仕事を成し遂げているかのように錯覚してしまうらしい。

もっとも、いわゆる受験戦争を勝ち抜いただけで、学問を修めることなしに医師になってしまう若者達に、それが錯覚であると認識させるのは容易ではあるまい。 「なぜ?」と問うことの重要性を教わらないことは、現代の医学科生の最大の弱点である。


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