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2015/02/27 脳梗塞の分類

臨床医学において、疾患を分類することには、疾患概念を正しく理解し、適切な治療を行うために、必要である。 膠原病は、現代においてもなお症候群として区別されているに過ぎず、適切な疾患分類は確立されていない。 私は将来、膠原病病理学の世界において、疾患概念を整理する仕事を行いたいと考えている。

過日、ある同級生が図書館で勉強しているところに遭遇した。 彼は、なにやら国家試験対策問題集のような教科書の「脳梗塞の分類」などというページを開いていた。 この教科書は、医学科生の間では有名かつ人気であり、名大医学科の学生の多くが読んでいるものと思われる。 それによれば、脳梗塞は「アテローム血栓性脳梗塞」「ラクナ梗塞」および「心原性脳梗塞」の三つに分類されるという。 このうち、前二者は緩徐進行性であり、心原性は急性発症するという。特に、心原性脳梗塞では背景に心房細動があることがあるとされる。 以上の記述に納得した人は、はなはだ勉強不足であるだけでなく、論理的思考に基づいて教科書を批判的に理解する姿勢が欠如している。 たとえば、内頸動脈の粥腫が破綻したことにより、比較的太い脳血管が閉塞して生じる脳梗塞は、どれにあたるのか。 名称からはアテローム血栓性脳梗塞であるように思われるが、しかし、こうした症例では、典型的には急性発症する。 また、いわゆるエコノミークラス症候群において、静脈系で生じた血栓が奇異性塞栓症を来した場合、どれに該当するのか。 こうした事例を考えれば、彼が読んでいた教科書の記述が不適切であることは明白である。 こうしたデタラメを公然と記載する連中にも、それを読んで納得したフリをする学生にも、実に、腹が立つ。

朝倉書店『内科学』は、脳梗塞の適切な分類を記載している。 まず、脳梗塞は心原性脳塞栓症と脳血栓症に大別される。 前者は、不整脈や弁膜症などにより心臓で塞栓が形成されるものだけでなく、卵円孔開存などの右左シャントによる奇異性塞栓症や、 脂肪塞栓, 空気塞栓, 腫瘍細胞塞栓なども含む。 すなわち、不適切な名称ではあるが、「脳血栓症以外の塞栓症」を心原性脳塞栓症という。 これに対し脳血栓症とは、脳血管内において血栓が形成されて塞栓症を来すものをいう。

脳血栓症は、さらに三つに分類される。第一はラクナ梗塞であり、これは脳実質を栄養する細い血管が閉塞することによる小さな脳梗塞のことをいう。 閉塞の原因は何でもよく、高度の粥状硬化による閉塞, 血管変性による閉塞, 心原性の微小塞栓、が考えられる。 ラクナ梗塞が緩徐に発症するという決まりは、ない。 第二はアテローム血栓性脳梗塞であり、これは脳血管の粥腫による狭窄や閉塞, 狭窄部で生じた血栓による遠位側の閉塞, 狭窄や閉塞による低潅流, によって生じるもののうち、ラクナ梗塞でないものをいう。 これも、緩徐に発症するとは限らない。 第三は血行力学的梗塞であり、脳血管病変による血行障害が、病変の遠位部における血管拡張などにより代償されていた患者において、 脱水等を契機に非代償性血行障害を来し、梗塞に至るものをいう。これは、通常は急性発症するであろう。

2015.02.28 語句修正

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