これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
昨日の話の続きである。
言葉の定義は、重要である。 昨今の社会情勢の中で、日本や米国などでは「テロ」などの言葉が多用されるようであるが、英国の国営放送である BBC では `terror' という語を使わずに `attack' などと表現するという。 なぜならば、「テロ」の定義は曖昧であり、基本的には「不適切な武力行使」というような、非難の意味で使われ、公平でないから、ということらしい。 反米武装勢力が米国の高層ビルを破壊し、民間人を殺害すれば「テロ」であり、 米軍がアフガニスタンで結婚式場にミサイルを撃ち込んだり、 ロシア連邦軍がチェチェンの学校を砲撃したりするのは「軍事行動」である、という区別は、不適切である。
攻撃を行ったのが国家の正規軍であるか非正規の武装集団であるか、という区別は、無意味である。 たとえば、いわゆるイスラエル軍がパレスチナ難民キャンプを襲撃し、家屋を破壊し、非武装の民間人を殺害した事例について、 日本政府は「イスラエル国の軍事行動」と表現するかもしれない。 しかしイラン共和国からすれば、イスラエルと称する連中はパレスチナを武力によって不当に実効支配している「テロリスト」なのであって、 いわゆるイスラム国と、根本的には同じである。 従って、いわゆるイスラエル軍の活動がテロなのか軍事行動なのか、という点については、客観的には判断できない。 そこで BBC は、全て `attack' と表現するのである。
医師が政治的な活動をすること自体には、私は賛成である。 しかし、医は、元来、政治的思惑によって左右されるものではなく、全ての人に広く平等に提供されるべきものである。 「平等」の定義は曖昧であるから、必ずしも米国型の医療保険制度が悪いとは限らないが、何にせよ、公正であることを追求すべきである。 そのことを、我々は、忘れてはならぬ。