これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2015/02/16 ハーバード大学と名古屋大学

ハーバード大学医科大学院といえば、医学の世界においては、まぁ、世界的な名門とされる。 これに対し名古屋大学医学部といえば、東海地方では随一の医学部とされるが、全国的には、いわゆる旧帝大の一つ、ぐらいの位置付けである。 京都大学、東京大学、大阪大学などに比べれば、名古屋大学は格下である、というような評価を受けることが多いように思われる。 そのため、名古屋大学からハーバードに留学した、とか、東京大学の教授になった、とかいうと、すごい、とか、優秀である、とか、言われることがある。 しかし、これは、事実誤認である。

世間からの評価についていえば、名古屋大学が、ハーバード大学や東京大学より下にみられているのは、事実である。 ハーバードは名門であり、その教授陣は名著というべき教科書を多数、出版している。 また、The New England Journal of Medicine に連載されている The Case Records of the Massachusetts General Hospital では、見事な医学的論理展開がなされている。 それに比べて、名古屋大学教授の手による名著は、少ない。 私が所蔵する教科書の中で、名古屋大学教授の手によるものは上田裕一『最新 人工心肺 第四版』の一冊のみであるが、 これは、かなりマニアックな書籍であり、学生一般に勧められる教科書ではない。 強いて挙げれば伊藤隆氏の『解剖学講義 改訂 3 版』や『組織学 改訂 19 版』もあるが、伊藤氏は名古屋大学出身とはいえ、教授としては北海道大学の所属である。 北海道大学教授の著書には、他に清水宏『あたらしい皮膚科学 第 2 版』という名著があることを思えば、 我が名古屋大学は、この面において、北海道大学の後塵を拝していると言わざるを得ない。

それでも、名古屋大学が、ハーバード大学より格下だということはない。 いったい、ハーバードの連中にできて、我々にできないことが、何か一つでも、あるだろうか。 彼らと我々を隔てるものがあるとすれば、彼らは自分達が世界一だと信じているのに対し、我々は東海一などという矮小な自尊心しか持ち合わせていない、という点ぐらいであろう。 我々に不足しているのは、専ら、この科学的自尊心である。 名古屋大学は、ハーバードに並ぶ世界的名門なのであって、その構成員たる我々は、それにふさわしい、学術的品格ある言動を心がけるべきである。

(具体的なことは、書くと下品になるから、書かない。)


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