これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2015/02/04 不必要な被曝

昨日の記事で不必要な被曝、と書いて、思い出したことがある。 一部の若手医師などの中には、放射線防護の意識が欠如している者がいるように思われる。

胸部 X 線画像や CT などの放射線を用いる検査は、多少とはいえ、侵襲的である、という事実を、理解していない者がいるように思われる。 これらの検査による吸収線量は、それほど高くはないから、これらの検査により癌などを来すことは、稀である。 従って、診療に必要であると考えられる限りにおいては、これらの検査を忌避することは、基本的には、推奨されない。 もちろん、妊娠中の場合は胎児に比較的大きなリスクが生じるから、例外である。

しかし理論上、こうした検査が癌などを生じせしめ、結果として患者の命を奪う事例は、稀ではあるが、存在する。 ただし患者も医師も、検査が発癌の原因であったとは、最後まで知ることがない。 また、検査中も患者は痛みを感じないし、特に侵襲的であるという印象は受けないであろう。 それでも、稀に患者の命を奪う、という意味においては、注射などよりも、よほど侵襲的な医療行為なのである。

以前、某病院において X 線による透視下の診療行為を見学していた際に、驚いたことがある。 画面上に、検者の手が、写っていたのである。 要するに、X 線が、検者、すなわち病院スタッフの手に、当たっていたのである。 これは、検者の手の位置が悪かったのか、それとも放射線照射のタイミングが悪かったのか、とにかく、不適切な被曝である。

実習を終えて帰る際、アンケートへの回答で、私は上述の事例に言及し、放射線防護上の問題があるように思われる、と指摘しておいた。 その後に改善がなされたものと信じている。


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