これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
実習や講義の際に、しばしば「実臨床」という語を聞く。 これは、たぶん「実地臨床」の略であり、「実際の臨床現場」というような意味らしい。 用法としては「教科書的には○○であるが、実臨床では〜〜」などと表現される。
こうした表現が用いられる背景には、教科書における記述と、臨床的な医療行為との間に乖離が存在する、という事実がある。 これは当然のことで、最新の医学研究の成果が教科書に記載されるまでには早くとも二, 三年、ともすれば十年ほどの時間を要する。 従って、こうした「遅れ」の間は、教科書の記述と臨床現場との間に乖離があるのは、やむを得ない。
しかし、そうした時間遅れ以外の場合に「実臨床」という言葉が用いられる場合には、注意を要するであろう。 先日書いたような論理の通らない診療行為を、「実臨床」の名の下に、 「論理はよくわからないが、臨床とは、そういうものなのだ」などと正当化する場合が、ひょっとすると、あるのではないか。
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