これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2014/04/29 オピオイド

今日、たまたま薬局で「コデイン類の鎮咳薬は一人一箱まで、未成年 (18 歳未満?) は云々」という注意書きをみて、おや、と思った。 私の記憶によれば、コデインはメチルモルヒネであり、体内でモルヒネに変化する。 つまり、法的にはともかく、薬理学的にはコデインは麻薬であり、そんなものを薬局で売っているのか、と驚いたのである。

「麻薬」という言葉は定義が曖昧であり、法的にはコカインなども含むらしい。 しかし医学的には麻薬といえばオピオイドのことであり、コカインは薬理学的にはアンフェタミンなどの覚醒剤と類似の作用を有する。 覚醒剤は交感神経系を刺激する一方、オピオイドはむしろ中枢神経系を抑制するので、 おおまかにいえば麻薬と覚醒剤は反対方向の作用を有するわけであるから、両者を混同してはならない。 オピオイドは、基本的には鎮痛薬として用いられる。これはかなり強力な作用を有するのだが、依存性も強いので、使い方には注意を要する。 覚醒剤は、法的には医療目的で使うことが可能であるが、現実には、滅多に用いられないらしい。

以前、緩和ケアの選択講義の場において、オピオイドの副作用として眠気が QoL の観点から問題である、という話を聴いたとき、 私はふと思いついて「オピオイドと覚醒剤を併用してはどうでしょうか」と述べてみた。 そのときは残念ながら、あまりに突拍子もない質問であったために趣旨が正しく伝わらず、これという回答は得られなかった。 実際のところ、こうした併用療法は、どうなのだろうか。

さて、私が常々疑問に思っているのは、鎮痛目的でオピオイドを使用した場合、患者がオピオイド依存に陥ることはあるのだろうか、ということである。 一部の書物などでは、「不思議なことに、鎮痛目的で使用される限りにおいては、オピオイドは依存性を発揮しない」といった説明がなされている。 『ハリソン内科学 第 4 版』でも、NSAID などで患者の痛みを取り除くことができない場合はオピオイドの使用を躊躇してはならぬ、とされている。 その一方で、少なからぬ臨床医は、依存性の観点から、オピオイドの使用にはしばしば躊躇するようである。 これは、こうした臨床医が無知なのか、それともハリソン内科学などが積極的すぎるのか、あるいは両者ともに正しいのか、一体、どういうことなのだろうか。


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