これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
名古屋大学医学部医学科の場合、特別に「診断学」という枠での講義や実習は行われない。 PBL だか基本的臨床技能実習だかが、それに当てられていたように思う。 従って、基本的には、診断学をいつ、どのように学ぶかは、学生の主体性に一任されていることになる。
私の場合、五年生の現在に至るまで、診断学は特別に勉強していない。 医学書院の『内科診断学』が名著だという噂は聞くが、自分では買ってもいないし、読んでもいない。 というのも、内科学が「各疾患について、その病態生理や診断、治療を学ぶ」という、いわば正引きであるのに対し、 内科診断学は「症候や検査結果から病態生理を推定する」という逆引きであるように思われる。 すなわち、理屈としては、内科学を存分に学べば、内科診断学は特別に勉強せずとも、おのずから修得されるはずではないか。
内科診断学を学ぶこと自体が悪いとは思わないが、思わぬ陥穽に嵌らぬよう、気をつける必要があろう。 すなわち、診断法を記憶すれば、一見、医学に習熟し、優れた学生であるかのように錯覚されるが、 それは記憶した知識や技法を実施しているに過ぎず、内科診断学が本来目指す所である論理的思考や医学的考察を修得した証左ではない。 学生のうちに、そうした実用的知識を修得する必要はなく、むしろ、医学の基礎をしっかりと理解することに専念するべきであろう。 今のうちに、どれだけ回り道をしたかが、将来の、医師としての引き出しの数を決めるのではないか。
というわけで、私は、診断学を学ぶのは六年生の終わり頃でよかろうと思っているのだが、いかがだろうか。