これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
最近、気になっているのが、全身麻酔の際に用いる吸入麻酔薬が心電図に及ぼす影響について、である。 たぶん全国どこの病院でも同じだと思うのだが、少なくとも名古屋大学医学部附属病院の場合、全ての手術室には心電図や酸素飽和度などのモニターが設置されている。 手術の際に、この心電図を眺めていて、ふと気づいたことが二つある。
第一に、全身麻酔の導入前後で、電気軸が変化する例があるのではないか。 私がみた一例では、麻酔前の心電図では電気軸が 70 度程度であったのに、導入後には 90 度近くに変化したようである。 軸の向きは目算なので正確ではないが、少なくとも、第 I 誘導の R 波が減高し、S 波が深くなった。 患者の体位は変化していなかった。左脚後枝ブロックでも生じたのだろうか。
第二に、全身麻酔下では T 波が増高する例が多いように思われる。 たとえば第 II 誘導では、ふつう、T 波は R 波よりもだいぶ小さい。 しかし全身麻酔下では、T 波が R 波の 1/2 以上の高さを持つ例が少なくないのではないか。
私は、こうした現象が典型的なのかどうかも知らないし、原因もよくわからぬ。 臨床的にはあまり気にされない問題ではあるらしいのだが、基礎医学的な観点からは、たいへん興味深い。 もし、詳細をご存じの方がいれば、ぜひ教えていただきたい。