これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2014/06/20 診察とセクハラ

以前、研究室に置いてあった書籍で、乳癌検診と称してセクハラを行う医師がいる、という記事を読んだことがある。 その書籍は、詳細はよく覚えていないが、何かの週刊誌の特集記事を単行本化したものか何かであり、 信憑性は低いのだが、とある病院だか医師だかを告発する内容であったように思う。

その記事には、ある医師からセクハラを受けたと主張する女性の証言か掲載されており、曰く、 その医師は触診と称して乳房にイヤラシイ触り方をし、乳頭にも卑猥に触れた、とのことである。 私は、その診察風景をみていないのでよくわからないが、この証言だけからは、その医師の触診方法が特に猥褻であったと推定することはできない。 乳房触診においては、乳房全体をよく触って「しこり」がないかを調べる必要があるし、 乳癌に由来する異常な分泌物が乳管から出てこないかを調べるために、乳頭から内容物を絞り出すような触り方もしなければならないからである。 これは、知らない人の目には、極めて猥褻な行為をしているかのようにみえる恐れがある。 特に、医師が男性であれば、なおさらである。

そこで我々、特に男性医師は、あらぬ疑いをかけられないように、細心の注意を払わねばならない。 診察室で患者と二人きりにならないように、必ず常に女性看護師に付き添ってもらう必要があるし、 診察においても、具体的に何の目的で何をしようとしているのか、患者によく説明する必要がある。 さらに、猥褻なことを考えているかのように誤解されぬよう、表情や視線にも充分に注意する必要があるだろう。 前述の医師に過失があったとすれば、患者に何らかの誤解を受けかねないような説明、手つき、表情、あるいは視線をもって診察したことであると思われる。

こうした誤解を受けることは、医師にとっても患者にとっても実に残念なことであり、それを回避するよう務めるのは、我々の責任である。 しかし根本的な問題として、個人的には、こうした触診は同性である女性医師が行う方が望ましいと思うし、 また、マンモグラフィーや婦人科の内診についても同様であるように思う。 とはいえ現状では女性医師が非常に不足しているため、なかなか、そのようにはいかない。難しいところである。


戻る
Copyright (c) Francesco
Valid HTML 4.01 Transitional