これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
過日、同級生の某君が、大学の私の机の上に置かれていた英和辞典をみて、「君の知性は、その程度か」という趣旨の発言をした。 曰く、使っている辞書をみれば、その人の知性の程度がわかる、というのである。 これに対し、私は、返す言葉がなかった。
その時、机上に置かれていたのは旺文社『新英和中辞典』であった。 これは、私が高校生の頃から使用してきたものである。 この辞書は、中学生や高校生といった英語の初心者には適しているであろうが、確かに、 我々のようなプロフェッショナルが言葉の一つ一つにこだわって文章を書くための用には、耐えぬ。
恥じ入った私は、ただちに自宅に戻り、かつて大学院時代に使用していた辞書三点、すなわち `Pocket Oxford English Dictionary', `New Oxford Dictionary for Writers and Editors', `New Hart's Rules' を書棚から取り出した。
`Pocket Oxford English Dictionary' は、普通の辞書である。単語の意味を調べるために用いる。 いわゆる英英辞典である。
`New Oxford Dictionary for Writers and Editors' は、繊細な表現の違いを調べるために用いる。 たとえば `inquire' と `enquire' の違いは何か、とか、`model' の現在分詞は `modeling' なのか `modelling' なのか、とか、 「かつて」を意味する表現は `one time' なのか `one-time' なのか、といった具合である。
`New Hart's Rules' は、文章を書く際の表現の規則である。たとえばシングルクォーテーションとダブルクォーテーションの使い分けであるとか、 クォーテーションの最後に . が来る場合はクォーテーションの中に入れるのか外に出すのか、といった具合である。
もちろん、こうした書法に絶対的な正しさはなく、それぞれの流儀があって構わない。 しかし、自身が何か文章を書く際には、「なぜ、そう書いたのか」を、必要とあらば他人に説明できなければならない。 そのための指標として、私はオックスフォード方式を採用した。
この辞書三点を、冒頭に登場した某君にみせたとろ「まぁ、それなら良いんじゃないかね」との言葉をいただいた。合格点であったらしい。