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2015/08/14 学生時代の勉強より 医者になってからの勉強の方がずっと重要である

標題のような言葉を、しばしば、耳にする。 しかし、たぶん、これは、とんでもない誤りである。

これまで述べてきたように、現状の医学科生は、医学を学んでいないし、現実の医療とも異なる「何か」を「学んで」いる。 そうした無意味な内容よりは、医者になってから学ぶ臨床技能の方が役に立つのは、当然である。

しかし本当は、学生のうちに、我々は医学の基礎を学ぶことになっている。 病理学、薬理学といった、いわゆる基礎医学や、公衆衛生学や法医学などの社会医学から始まって、臨床検査医学のような基礎と臨床の中間に位置する分野、 そして内科学や外科学などの臨床医学を、カリキュラム上では、学んだことになっている。 そうした医学を本当に学んでから医師になった者と、医学を学ばずに経験と臨床手技だけ磨いて医業に就く者では、 同じ患者、同じ検査結果をみても、そこから得るものは大きく異なるであろう。 すなわち、「医者になってからの勉強」は「学生時代の勉強」を土台として初めて成立するのであって、両者を比較すること自体が誤りである。

特に学生が軽視するのは、薬理学、病理学、臨床検査医学ではないか。理屈を考えるよりも、薬の使い方、検査結果の読み方を丸暗記する方が「効率的」だからである。 それで間違いが起こったとしても、「標準的な水準」に達してさえいれば法的責任を追及されることはないのだから、周囲に合わせておけば「問題ない」のである。

しかし「標準的な水準」とは、「多くの医師が達している水準」ではなく「医学教育カリキュラムから考えて達していることが期待される水準」と解釈するべきである。


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