これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2015/08/04 Katzenstein

以前に購入してから本棚の肥やしになっていた Katzenstein `Surgical Pathology of Non-Neoplastic Lung Disease' を、 飾っておくだけではもったいないので、少しずつ読み始めた。 さっそく、総論部分において背筋のゾッとする記述があったので、ここに記録しておく。

まず前提として、びまん性肺疾患の組織学的診断は、難しい。 腫瘍の診断においては CT や MRI よりも組織学的診断の方が信頼できるが、びまん性肺疾患においては、そうでもない。 一般論として病理診断においては臨床所見も重要であるが、特に、びまん性肺疾患においては画像所見などの重要性が大きい。 その上で、Katzenstein は次のように述べている。

Careful correlation of clinical and pathologic findings in all cases can save the pathologist from making an erroneous (and sometimes foolish) diagnosis. It should be remembered, however, that microscopic examination remains the gold standard for diagnosis, and the pathologis must be prepared to stand by the histologic diagnosis when it is straightforward, regardless of the clinical findings.

私が訳すと、次のようになる。

臨床所見と病理学的所見を常に慎重に対比することは、病理学者にとって、誤った、そして時に馬鹿げた診断を下すことを回避するために、重要である。 しかし、検鏡所見が診断のゴールドタンダードであるということは、忘れてはならない。 臨床所見が何であろうと、病理学者は、組織学的所見が明確に何かを物語っている限りにおいて、常に、その側に立たなければならない。

当然、といえば当然のことであるし、たぶん、二年ほど前の私であれば、この文言に何の感動もおぼえなかったであろう。 しかし、一年半ほどの臨床実習を終えて、この言葉を読むと、その印象はだいぶ異なる。 たぶん、初期臨床研修を終えてから、あるいは医師を十年ほどやってから、これを読めば、また違った感想を持つのであろう。


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