これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2015/07/29 飲酒による意識障害

だいぶ、間隔が開いた。このあたりの事情については、今は触れない。

さきほど、耳鼻咽喉科の試験結果を確認してきた。合格である。 これは臨床実習で精神的に疲弊していた時期の試験であり、ろくに勉強する気も起きなかったため、 南山堂『新耳鼻咽喉科学』を 4 分の 1 程度だけ読んだ状態で受験した。まだレビューは書かない。 それで合格なのだから、かなりの温情採点であったものと思われる。

さて、某日 23 時 20 分頃、近所のスーパーマーケットからの帰路において、路傍に倒れている中年男性を発見した。 立場上、単に通り過ぎるわけにもいかないから、意識状態の確認を行った。 声をかけただけでは反応がなかったが、肩を軽く叩くと開眼した。JCS 20 である。 発話はみられたが、意味不明であった。呼気からはアルコール臭がした。 飲酒による酩酊であろうと考えられた。 なお、後から思えば、GCS による意識障害の評価も行えば良かった。

どのように対応しようか少しだけ迷ったが、患者には重篤な様子はなく、私はあいにく電話を携帯しておらず、手荷物にはナマモノも含まれていたことから、 一旦帰宅し、電話をもって再び患者のもとを訪れた。この間、十分弱の時間が経過していたと思う。患者は、あいかわらず路上で横になっていた。 正直なところ、あまり関わりたくなかったので、警察に任せようかと思い #9110 に電話したが、相談窓口は夜間は閉まっているらしい。 しかし、こんな案件で 110 番に連絡するのも、いかがなものかと思われた。 そこで、やむなく、自分で対応することにした。

大きな声で、肩を叩きながら話しかけると、一応、会話は成立した。 立てるか、と問うたところ、ヨロヨロと患者は立ち上がった。 帰れるか、と問えば、歩き出したが、いわゆる千鳥足であり、小脳失調が疑われた。 段差につまずいて倒れて頭部打撲、頭蓋内出血などを来されては困るので、結局、患者自宅の玄関口まで送っていった。

この対応が適切であったかどうかは、難しい。 ひょっとすると、あの後、患者は自宅で嘔吐し、吐瀉物により窒息して死亡したかもしれない。 また、酩酊した患者から暴行などを受ける恐れもあった。 少なくとも、患者を自宅まで護送することは不必要であるし、犯罪予防の観点から、異性相手には原則として避けるべきである。 かといって、路上に寝かせておくのも、適切とはいえない。 多くの人が、こうした意識障害患者に対し「みてみぬふり」をするのは、こうした難しさがあるためであろう。

なお、仮に彼が自宅で窒息死していたとしても、それは、意識障害を来すほどに泥酔した彼自身の問題であり、私の責任ではない。 稀に、酔った上での行動については自身の責任ではないと誤解している者がいるが、そんなことはない。 刑法判例においても、飲酒による心神喪失や心神耗弱による免責は認められない、とされている。 酒席での暴言や乱行には、ゆめゆめ、注意されよ。

2015.07.31 追記

戻る
Copyright (c) Francesco
Valid HTML 4.01 Transitional