これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2015/07/01 過去の誤診

先日、レポート提出のために、昨年度の臨床実習の際に自分が書いたカルテを読み返していて、恥ずかしくなった。

私は、心電図が大好物である。 昨年度の実習に際しても、心電図は積極的に判読し、所見や診断をカルテに記載していた。 だが、その患者の心電図の判読には、私も苦しんだようである。 III 誘導の QRS が二峰性になっている、という所見を記載してはいるのだが、当時の私は、その意義を理解することができなかったようである。 「非特異的な変化である」と診断して、カルテに記載した。 しかし QRS の所見に「非特異的な変化」などというものは、滅多に、ない。 そのことは当時の私も認識していたのだが、診断できずに、苦し紛れに「非特異的」と記載して逃げたのである。

今回、あらためて、その心電図を読んでみたところ、小さな陳旧性下壁心筋梗塞である、と、即座に診断できた。 小さな陳旧性心筋梗塞は、直ちに治療を要するものではないが、リエントリー性不整脈を惹起する恐れがある、という意味で臨床的な意義を持つ。 従って「非特異的な変化」という私の診断は、誤診であったと、いわざるを得ない。

当時は、こんな心電図も読めなかったのか、と呆れると共に、気づかぬうちに、この一年間で少しは進歩しているらしいことが嬉しかった。


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