これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2015/09/29 九年遅れ

私は、29 歳の 4 月に名古屋大学医学部医学科に三年次編入したので、高卒現役で入学した同級生諸君に比べると「九年遅れ」である。 この事実を、諸君が、どのようにみているのかは、知らない。 極めて好意的な人は「ずっと大学で勉強し続けている意欲的な人」とみてくれるかもしれないが、 悪意のある人は「九年間も無駄な回り道をした残念な人」とみているであろう。 考え方は個人の自由であるが、私としては、後者のような解釈をしているように感じられる相手とは、あまり関わらないようにしている。

何が言いたいかというと、諸君は、留年したり、国家試験で不合格になったりすることに対して、恐れ過ぎではないか、ということである。 端的にいえば、通算 8 回、留年や浪人をしたとしても、私よりは「上」である。 たかが一回や二回の国家試験不合格を、恐れたり、不名誉に感じたりする必要はない。

世の中には「あなたは九年間を無為に過ごしたわけではなく、別の勉強などをしていたのだから、それと留年や浪人を同列に扱うわけにはいかない」と 言ってくれる優しい人もいる。 しかし、それは国家試験不合格組や留年組に対しても、同じことを言うべきである。 一年間を、ただ国家試験対策勉強だけのために費すならば、それは確かに無駄な時間である。 しかし、その一年間で、少しは国家試験を意識した勉強をするにしても、残りの時間をその他の活動に費すならば、それは有意義な一年間である。 ここでいう「活動」とは、何も医学の勉強である必要はなく、何らかの社会活動であるとか、創作活動であるとか、あるいは長期の旅行に行くとか、何であっても良い。

そこから、さらに進めて考えれば、医学科の五年生なり六年生なりになってから、卒業のための試験であるとか、国家試験であるとかのために、 姑息的な勉強をする時間こそ人生で最も無駄な時間ではあるまいか。

以上の理由により、留年や国家試験不合格を恐れることなく、若者らしい、正々堂々とした態度で医学に向き合うことを、強く推奨する。

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