これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2015/12/06 医科専門学校

医師の仕事というのは、既に確立された医療技術を習得し、それを教えられた通りに患者に対して実施することである。 従って、医学の勉強に際しては、正確な知識を蓄えることこそが重要なのであって、 「勉強する」という語と「覚える」という語は、だいたい、同じ意味と思って良い。

……という意味不明な認識が、なぜか、医科学生や若い医師の間では支配的なようである。 一部の例外を除けば、大抵の教授や学界の重鎮は、むしろ「マニュアル診療ではいけない」というようなことを言っているのに、なぜか、若手は逆の認識を持っている。 たぶん、部活動の悪い先輩などから、よからぬ教えを受けているせいであろう。

従って、医学的な問題を議論しようと思っても「ガイドラインにどう書いてあるか」「教科書にどう書いてあるか」という所で止まってしまい、それ以上は、なかなか進めない。 名大医学科の場合、四年生で PBL、五年生で学生 CPC と、医学的な議論を行う実習もあるのだか、そもそも議論のための基礎を修得していないのだから、 こうした実習は形骸化し、実りの乏しいものになっているように思われる。

医学科の連中は、まるで自分達がエリートであるかのように錯覚しているが、それは大学入学時点での話に過ぎない。 医学科 5, 6 年生は、他学部でいえば大学院修士課程に相当する、ということになっている。 修士課程修了といえば、自分の専門分野についてならば、教授陣や、世界中の研究者を相手に互角に議論、討論できるレベルである。 それをふまえて医学科の現状をみれば、もはや「大学」と称せる水準の教育を行っていないと言わざるを得ない。「名古屋大学附属医科専門学校」などと改組するべきである。

一番の問題は、当事者が問題意識を欠いていることである。 医者は、自分のことしか考えていない。医療制度をどうするか、公衆衛生をどう守るか、ということには、関心がない。 自分の技を研き、出世し、金を稼ぎ、立場を守ることしか考えていないのが、医者であり、医科学生である。 現在の制度に自分が適応することに集中しており、現在の制度を改めようという意識はない。

一つには、大学入試のあり方にも問題はあるのだろう。 それでも、入学後の教育、特に 1, 2 年次の教育さえキチンと行われていたならば、ここまで酷い状況にはならないはずである。 私は北陸に出ていく身であるから、名古屋大学をはじめとした東海地方の医学教育が腐っていようが何だろうが、関係のない話ではある。 しかし、そうした医者の診療を受けねばならない東海地方の住民の方々には、心より同情申し上げる。

北陸の医学教育の現状はよく知らぬが、仮に問題があったとしても、これから我々が建て直すので、心配はいらぬ。 名古屋大学のような歪んだエリート意識は少ないであろうから、北陸の再建は、比較的、容易であろう。


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