これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2015/12/04 図書館の充実していること

名古屋大学のような名門大学に比べると、北陸医大 (仮) のような地方大学には、一つだけ、弱点がある。 学術文献が貧弱なのである。

名古屋大学附属図書館医学部分館は、医学科と同じ鶴舞キャンパスにあり、医学関係の文献を中心に所蔵している。 この図書館の素晴らしいところは、内分泌学、麻酔学、といった分野毎に、大抵の定評ある教科書が開架書庫に納められている点である。 このため、学生がちょっと調べものをしたいと思った時に、`Miller's Anesthesia 8th Ed.' だとか、 「ウィリアムス 産科学 原著 24 版」だとかいった専門書を、すぐに開くことができる。

北陸医大の図書館も、こうした専門書を所蔵してはいる。 しかし OPAC で検索してみると、だいたい「研究室貸出」となっていて、図書館の開架書庫にはないらしい。 もちろん、各研究室に行って「閲覧させてください」と言えば喜んでみせてくれるであろうが、ちょっとした調べ物だけのためにイチイチ研究室を訪問するのは、 時間や労力の観点から、あまり便利とはいえない。

さらに、蔵書量自体も、残念ながら我が北陸医大は名古屋大学に劣る。 たとえば上述の「ウィリアムス 産科学」は優れた訳本で、版も原書の最新版と同じである。 私のような、英語を日本語ほどには扱えない一般的な学生からすると、たいへん、ありがたい書物である。 もちろん名古屋大学では開架書庫に納められているのだが、北陸医大では、OPAC で調べる限り、そもそも所蔵していないようである。 また、これは何かの間違いかもしれないが、小児科学の基本的な教科書である `Nelson Textbook of Pediatrics' も、 19th Ed. は北陸医大の開架書庫にあるのだが、最新版の 20th Ed. が検索に引っかからない。

私のように研修医として北陸医大に赴く者は、まだ良い。 給与の 15 % 程度を資料代に投入すれば、それなりに立派な蔵書を個人で揃えることができるからである。 しかし学生の場合、そうもいくまい。

予算や設備といった面においては、我々地方大学は、旧帝大のような名門には及ばない。 その代わりに、人や診療科の垣根が低いこと、コマワリが効くことを活かして、我々は、我々ならではの医学や医療を展開していく必要がある。


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