これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2015/11/28 医師国家試験対策予備校

伝聞であるが、ある友人によると、某予備校のビデオ講義で、講師が次のような発言をしていたそうである。 「我々の仕事は、他の人がやっているのと同じようなことを、他の人と同じようにやることである。」 その友人は野心溢れる学生であるので、さすがに、この発言には腹が立ったらしい。 しかし世の医学科生の多くは、むしろ、この発言により安堵するのではないか。

上述の講師の発言内容に対しイチイチ反論することには、私の品格をかえって卑しめる以外の何の意義もないから、ここでは議論しない。 しかし、この話を聴いて、北陸医大で次の四月から同僚になる予定の某君のことを思い出した。

今年の夏であったか秋であったか、北陸医大 (仮) 六年生の彼と、お話をする機会があった。 その時、彼は「予備校のビデオ講座やクエスチョン・バンクなどを中心に勉強するのは、人材の多様性という意味からは、本当は良くないとは思う。」と述べた。 話を聴く限りでは、大学での彼の成績は、あまり芳しくないようである。成績の良し悪しと見識の高低との間には、さして強い相関は存在しないという証左である。 彼と同じような意見の持ち主は、もしかすると名大医学科にも少なくないのかもしれないが、思っていても、それを口にするには多大な勇気を要する。 名大の多数派と北陸医大の彼との違いは、紙一重のようにみえて、実は雲泥の差なのである。

大学入学の時点の偏差値では、率直に申し上げて、我々北陸医大は名古屋大学よりも格下であった。 しかし六年経って、医師としての資質、医学に向き合う姿勢については、どうか。 敷かれたレールから外れまいと、センセイの仰ることを無批判に受け入れ続けるうちに、 医師として学生として、大事なものを次々と捨て去ってしまったという自覚は、彼らにはあるまい。 北陸医大の医師国家試験合格率は国立大学の中では低い方だが、むしろ、あんなおかしな試験に 9 割以上も合格する方が異常である。 北陸医大は、健全といえる。

来春から、彼と共に働けることを、心より楽しみにしている。


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