これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
一部の学生や若手医師らが濫用する医療用語の一つに「適応がある」というものがある。 これは「(薬剤や治療法などが)有効であると考えられる」という意味である。 たとえば、広汎性腹膜炎、つまり腹膜全体に炎症が広がっている患者について「手術適応がある」などという。 さらに格好つけて「オペ適応がある」とか「オペ適」などと表現する者もいる。 逆に、たとえば両側肺癌および多発転移があり、手術できないような状況をさして「手術適応がない」などという。
この「適応」という語を好む医師は、ほぼ例外なく藪医者であると思って良い。 医師国家試験のような、明確に有効と無効を区分された架空の世界であれば、適応があるとか、ないとかいう概念も成立する。 それ故に、国家試験予備校や、受験対策本の類では、この語を好んで用いているものと思われる。 しかし本当の医学、医療では、治療法について「有効」「無効」などと単純に区分できるものではないし、当然、「適応」の有無は不明瞭である。
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