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2015/11/06 教科書レビュー: 医学書院『標準泌尿器科学』第 9 版

通読した上でのレビューである。 同書は、泌尿器科学について基本的なことをまとめたものであり、学生が基本的な教養のために読むものとしては過不足がないように思われる。 ページ数も、付録等を含めて 380 ページと、手頃である。 ただし、内科学や外科学の一般的な内容もかなり含まれているので、一字一句キチンと読もうとすると退屈な部分も多い。

内容的には、残念な意味で医学書院らしい。やや辞書的でストーリ性が乏しく、読んでいてワクワク興奮するような書物ではない。 熟読すると退屈で飽きるので、総論だけはマジメに読んで、各論については適宜、飛ばしながら読んでも良いかもしれない。 術語の誤りなど、気になる表現は少なく、文章は整っており、その意味では読みやすい。 ただし 182 ページに「リツキサン」と記載されているのは許容し難い。正しくはリツキシマブである。

医学書院「標準」シリーズは、あくまで医師国家試験を強く意識した教科書だから、 読んで楽しむ、という意味では `Campbell-Walsh Urology 10th Ed.' などの専門書には劣る。 たとえば、精巣腫瘍に対する化学療法としてはブレオマイシン、エトポシド、シスプラチンの BEP 療法が標準的とされるが、 なぜアルキル化薬を使わないのか、というような疑問には答えてくれないので、ガイドラインの解説などを適宜参照しながら読み進める必要がある。

このように『標準泌尿器科学』は、泌尿器科学にそれほど関心のない学生が、あくまで教養程度の目的で書棚に置いておく本としては、推奨できる。


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