これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2015/10/26 マッチング結果の続き

昨日の話を続けるつもりであったが、ホットなニュースが入ってきたので、膜電位の話は後日にする。

m3.comは、医療関係者向けの情報サイトであり、医学科生も対象とされている。 同サービスが10 月 23 日に配信した記事は、大学病院についてのマッチング結果を総括するものであった。

気になったのは「名古屋大は自大学出身がゼロ」という小見出しの部分である。 「(自大学出身者が) 30 % 以下だったのは (中略) の 9 大学で、昨年より 6 大学増加。出身大学の大学病院に縛られずに初期研修を行う流れも進んでいる。」とある。 全国的にみれば、以前は大学病院での研修が主流であったものが、近年では市中病院で研修する者が増える流れにあるらしいので、これは誤った記述であるとはいえない。 しかし、記事全体としてみれば、まるで名古屋大学が先進的であるかのような誤解を与えかねず、その意味では不適切である。

名古屋大学の場合、もともとは大学病院での研修を行っておらず、卒業生は皆、市中病院で研修を受けていた。 比較的最近になって、名大病院でも研修を行うようにしたのだが、卒業生はなぜか大学病院での研修を好まない傾向が続いている。 私が見聞した限りでは、名大病院で研修を受けない理由として多いのは「給料が安い」「先輩は皆、市中病院に行っている」「そもそも名大病院の研修・教育体制が信用できない」 といったものである。 このうち最後の「研修・教育体制の問題」については、私も思う所があるので、卒業する前に担当教授に心中を打ち明けておこうとは思っている。

このように、統計の上からは名古屋大学の出身者が革新的で、外の世界に飛び出していく積極性を持っているかのように誤解しかねないが、事実は全く逆である。 名大の卒業生は、東海地方の、いわゆる名大関連病院で研修を受ける例が大半である。 中には、名大とは無関係な病院に行く者もいるのだが、私の印象では、それは東海地方以外から名古屋大学に来た学生に多いように思われる。 よその世界からやってきて、名大関連病院の閉鎖社会に辟易して、東海地方から脱出するのかもしれぬ。 あるいは、単に、地元出身者と外様との間で世界に向かう志の高さが違うのかもしれぬ。

何にせよ、外部の人が統計だけをみて名大医学科について勘違いすることのないよう、ご注意申し上げる次第である。


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