これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2015/10/07 許容範囲

一部に、私に対して「二枚舌」と批判する声があるかもしれないので、一応、弁明しておく。 二枚舌というのは、私が試験対策特化型勉強を批判する一方で、 Jamilah 氏のプロジェクトに関連して医師国家試験の過去問を閲覧している点についてである。

私は何も、過去問をみるのが卑怯だ、とか、過去問をみないというハンディキャップを負いながら合格するのがカッコイイ、などという話をしているのではない。 私は、過去問を閲覧するという行為自体を問題にしているわけではない。 「得点するための勉強」は、否応なしに医学の基本や本質から乖離してしまう、という点を批判しているのである。 特に、現行の医師国家試験のような、医学の基本を無視した試験では、この乖離は顕著なものとなる。

実際、医師国家試験については、過去問を全く閲覧せずに受験することは、お勧めできない。 四年生を対象にした CBT は、基礎医学的な内容が多いことや、再試験があることから、通常の医学の学識だけでも対応できる。 しかし医師国家試験は、医学ではない、暗黙のうちに定められた「国家試験の約束事」が多いために、通常の学識だけでは、まず対応できないように思われる。

少なくとも名大医学科においては、国家試験の問題が著しく不適切であることや、 いわゆる国試対策勉強は邪である、ということを認識している学生は、少なからず存在するように思われる。 しかし、遺憾ながら、試験対策を放棄するまでの勇気は持っていない学生が大半なのであろう。 あるいは、試験を受ける以上は高得点を獲得するために対策を講じるのが当然だ、というような信仰を持っているのかもしれぬ。

全国を探せば、「クエスチョン・バンク」などの国家試験対策本や、MEC, TECOM などといった予備校に頼らない勇気のある学生も、少数ながら存在するであろう。 ひょっとすると、この日記を読んでくれている人の中にも、一人か二人ぐらいは、いるかもしれない。 そして、たぶん彼らも、迫り来る試験に怯え、くじけそうになる自分の弱い心と必死に戦っているのではないかと思われる。 そうした一人か二人の学生のために、ここにメッセージを残しておく。

あなた方は正しい。 たとえ周囲の誰一人として、その正しさを公には認めなかったとしても、それでも、あなた方は正しい。 正しいと信じることを貫くのは、何よりも価値のあることであって、そのために大きな代償を払うことになるとしても、躊躇するべきではない。


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