これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2016/01/08 再試験とシリア情勢

単位認定試験の結果が、全て出揃った。 結局四年間を通して、本試験で不合格になったのは、微生物学 (寄生虫学)、脳神経外科学、泌尿器科学、整形外科学、形成外科学、救急医学 のみであり、いずれも再試験で合格した。 内科学も不合格を覚悟していたのだが、得点開示されたところによれば 70-79 点、とのことであった。余裕の合格である。

ところで、この日記では、あまり社会問題を取り扱いたくないのだが、こういう時世であるから、多少は、やむを得まい。 少し前の話になるが、AFP 通信からISと戦う女性キリスト教徒部隊、シリアという記事が配信された。 AFP というのは、フランスの報道機関である。 この記事の発信地はシリアのハサカという街である。 現地に入って報道しているのであって、安全なエジプトのカイロあたりで情報収集しているどこぞの新聞社などとは、格が違う。 記事の内容は、要するに地元のキリスト教徒女性による民兵組織の紹介である。

この記事を読んで、二つ、気になった。 一つは、わざわざ「キリスト教徒」という点を強調していることである。 現在、イラクやシリアのあたりを実効支配している ISIS などと呼ばれる勢力はイスラム教を標榜しているが、 本来のイスラムの教義からは乖離しているため、他のイスラム教徒からも強く反発されている。 それを、イスラム対キリストというような、宗教対立であるかのように煽る風潮が一部にあり、好ましくない。 イスラム圏には野蛮な連中が少なくないのは事実であるが、イスラムの教義自体は、野蛮ではない。 もちろん、男女差別については不穏当な教義もあるが、それはキリスト教や仏教だって、同じことである。 現在のアラブやイスラム圏における男女差別問題は、宗教というよりも、土着の風習の問題なのである。 そして土着の風習に関していえば、日本も相当なものである。

もう一つは、彼女らが「キリスト教徒」を称することについてである。 聖書には「圧政に対し、武器を持って抵抗せよ」とは、書かれていない。「敵を殺せ」とも書かれていない。 真のキリスト教徒が、はたして、迫り来る敵に対して武装して立ち向かうようなことを、するのだろうか。

戦うのが悪いとは、思わない。しかし「キリスト教」を標榜するのは、よろしくない。 ただし、記事の内容からは、「キリスト教徒」を強調しているのは記者であって、当人達は、それを前面には押し出していないように感じられる。 組織の名前も、英語でいうと Female Protection Forces of the Land Between the Two Rivers であって、キリストという語はない。 あまり公正な報道ではない。

2016/01/10 泌尿器科学を追加。隠していたのではなく、忘れていただけである。

戻る
Copyright (c) Francesco
Valid HTML 4.01 Transitional