これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2015/05/28 医師と看護師の服装の違い

病院によって事情は異なるようだが、名古屋大学医学部附属病院の場合、医師と看護師は、服装がだいぶ異なる。

看護師は、看護服などと呼ばれることもある、専用の服を来ている。作業服のようなものであり、上下はセパレート式で、上は概ね半袖、下は長ズボンである。 胸元は完全に閉鎖されている。長髪の者は、おだんご状にしている。 これが明文化された規則によるものなのかどうかは知らないが、合理的である。 看護服は、血液等の汚染から身を守るための装備であるし、頭髪は感染源となるから、まとめるのが衛生的である。 かつては看護帽などと呼ばれる帽子を被っていた時代もあるらしいが、これは不衛生なので、現在では使用されない。 看護師の卵たる学生も、だいたい、これに準じる服装をしている。

これに対し医師の服装は、統一されていない。 血液などによる汚染のリスクが特に高い行為をする際には手術衣に着替えるが、それ以外は、普段着の上に長衣型白衣を着用するか、 あるいは普段着を脱いで短衣型の、いわゆるケーシー型白衣を着用する。 短衣型白衣の場合、下半身は普段着のまま、丸出しである。長衣型の場合も、だいたい膝丈ぐらいなので、下腿部分は普段着が丸出しになる。 そして長衣型は、ふつう、胸元が開いている。 すなわち、長衣型にせよ短衣型にせよ、防護着としては、実に隙だらけなのである。 その上、白衣の前のボタンを外している医師も多く、この場合、白衣は本来の目的をほとんど果たしていない。 しかも医師は髪型も多様であり、長髪を束ねただけの者も少なくない。看護師で肩より下に頭髪を垂らした者がいないのとは、対照的である。 稀に、診療にあたり指輪を着用していたり、 しかも手袋を着用せずに患者に触れる医師がいるが、極めて不衛生なので、いけない。 ピアスなどの装飾品も、可能であれば外した方が良いだろう。

技師は、衣服は看護師に近いが、頭髪は医師に近いように思われる。

衛生的な観点からすれば、医師も、看護師と同様の服装をするべきである。 少なくとも、白衣の前をはだける行為に関しては、弁護の余地がない。 ただ、胸元が開いている長衣型白衣を着用することについては、一定の意義がないわけではない。

個人的には好きではないのだが、ネクタイを着用し、襟のついた白衣姿を「カッコイイ」とする意見は、世間では一定数、存在するらしい。 患者の中にも、そういう格好をみて「キチンとした、信頼できそうな医師」と感じる例があるという。 そういう心理を利用し、良好な医師患者関係を築くための手段として、衛生面を若干、犠牲にしてでも、このような服装をすることは合理的であるかもしれない。

以上の議論から、次のことが結論できる。 一部の医師や学生は、胸元の開いた長衣型白衣を着用する際に、白衣の前ボタンを外したり、あるいは男性であってもネクタイを着用しない例があるが、これは不適切である。 私は、性別によってネクタイの有無を分けるのは不当な男女差別、不適切なステレオタイプだと思うが、 一応、現代日本の多数意見として「ネクタイは男性のもの」というような雰囲気があるようなので、女性はネクタイをしなくても良いかもしれない。 ただ、一部の高等学校の制服などでは女性でもネクタイを着用することもあるから、女性医師もネクタイをして構わないのではないかとは思う。

2015.05.29 誤字修正

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