これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2015/04/23 酒席での話題

修士課程の学生であった頃のことだと思うが、私は、某原子力研究機関の某部門を、実験だか見学だかの目的で訪れたことがある。 この際、その部門の懇親会のようなものに、ご相伴させていただいた。 その時に聴いた話で、実に印象深いものが、一つだけある。

その部門は、我々の業界では日本で最も有名な研究者達の集まりであった。 懇親会にも、論文等で名前だけはよく知っていた人々が何人も出席していたので、私は「あぁ、あの人が○○さんなのか」と、しきりに感心していた。 そうした有名人の中の一人である某氏は数値計算の第一人者であって、私も研究上、その人の開発した計算ツールを使用していた。 便宜上、その人のことを A さんと書くことにする。

懇親会の後で、若手研究者の一人が「A さんが、あのように酒を飲んで談笑するのは、珍しい」と教えてくれた。 A 氏は、酒席に参加はするのだが、だいたい、いつも仕事の話しかしない、というのである。 それでも、研究の上では極めて優秀な人であるから、周囲から煙たがられることもなく、尊重されているらしい。 この話を聴いて、私は「あぁ、私も、そのようになりたいものだ」と思った。

私は、恥ずかしながら学問に対して A 氏ほどストイックではなく、医学に対する愛情と熱意は人後に落ちぬ、とまでは言えない。 しかし A 氏と会い、わずかばかりとはいえ言葉を交わしたことで、自分の行動に、ある種の自信を持つことができるようになった。

私は、学生同士の集まりで出会った相手に対しては、時に、自己紹介より先に医学トークを展開することがある。 学内であれば、顔は知っているが名前は覚えていない、という程度の相手に対し、遠慮なく医学トークを持ちかけることもある。 三年生の頃は、「講義室で前の方に座っている学生は、医学のことが大好きに違いない」と決めつけて、相手の都合など気にせず話しかけたものである。


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