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2015/04/13 教科書レビュー: 南山堂『TEXT 眼科学』 改訂 3 版

本日、眼科学の試験が行われた。この機会に標題の教科書を (概ね) 通読したので、レビューする。

同書は 36 名の執筆者によるものであり、編集は慶應義塾大学教授 坪田一男と、筑波大学教授 大鹿哲郎である。 医科学生向けの教科書であるが、医学書院の「標準」シリーズとは異なり、国家試験対策を強く意識した作りにはなっておらず、上品な書物である。

記載内容については、編集方針について執筆者間の意思統一がなされていないらしく、章によって品質のばらつきがある。 章によっては、写真などの図譜に説明が加えられておらず、初学者には、どこが病変なのかすら、よくわからないものもある。 これでは、写真を掲載する意義が乏しい。 また、全体的に術語や概念についての説明が乏しく、眼科学の専門用語を説明なしに用いている例が多いため、医学書院『医学大辞典』第 2 版などを参照しつつ読む必要がある。 さらに、専門的な内容は省略されることが多く、不満が残る。学部学生向けの書物にありがちな「痒い所に手が届かない教科書」であると、言わざるを得ない。 これらの不満を軽減するために、必要に応じて Yanoff and Sassani `Ocular Pathology 6th Ed.' や、文光堂『鑑別診断のための眼底アトラス』などを 参照しながら読み進める必要があった。

また、一般の学部学生向けの教科書であるはずなのに、まるで対象読者として眼科医志望の学生を想定しているかのような記述も一部にみられたことは遺憾であった。 たとえば、p.161 に「...小児科と連携して診療にあたる.」とあるのが、これにあたる。 学部学生向けなのだから、あくまで医師一般が持つべき医学的教養として眼科学を記述するべきである。 我々は医学の一分野たる「眼科学」を修めているのであって、眼科の臨床テクニックを習っているわけではないのだ。

しかし、総論部分や、各論の中でも糖尿病網膜症や夜盲症については、格調高く、眼科学の初等的教科書として十分に満足できるものであった。 特に糖尿病網膜症については、単なる臨床知識ではなく、その背景を流れる医学的哲理を、可能な限り学生に伝えようとする情熱が伝わってきた。

全体として、眼科学の入門書としては推奨できる。

2015.05.11 標題修正

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