これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2015/04/12 Ackerman

`Rosai and Ackerman's Surgical Pathology 10th Ed.' を購入した。 これは、緻密で繊細な記述に定評がある、病理診断学の世界的な名著である。 どこの病院の病理部に行っても、まず間違いなく (旧版かもしれないが) 本棚に置かれている。 病理医が診断に困った時、原点に戻って病理診断学的疾患概念を確認する目的で、事典のように使う書物である。

もちろん、これは学生向けではない。学生が、このようなマニアックな記述を必要とする状況は、かなり限定されるからである。 しかし、たとえば「蜂巣肺とは何か」ということを正確に理解しようとすると、『ロビンス 基礎病理学』などの学生向け教科書や 医学書院『医学大辞典』のような一般的辞書では、記載が貧弱である。 当然、インターネット上には信頼できる情報が乏しい。 こうした場合には、Ackerman のような専門的書物が必要となる。 それでも、使用頻度と値段を考えれば、図書館で用を済ませるのが妥当であり、学生が個人の財産としてこれを所蔵する意義は乏しい。

それでも敢えて購入したのは、率直にいえば、書棚に飾る目的が大きい。 この「外科病理学の聖典」を日夜、視界の片隅に置くことで、病理医 (の卵にならんとしている卵母細胞) としての自尊心を忘れないようにするためである。

ついでに Mills の `Histology for Pathologists' も購入した。 これも書名の通りの内容であって、正常組織の構造について、その特徴的な所見を中心に解説した名著である。 これも、病理医が「この所見は正常なのかな、おかしいのかな」と迷った時に調べる事典である。 しばしば、Ackerman と並べて病理部の書棚に置かれている。

たぶん、卒業までに、これらの書物を開く機会は数えるほどしかないであろう。 しかし両者ともまだ数年は新版が出ないであろうから、卒後臨床研修が始まってからも使えるであろうと考え、早いうちから所有することにした。


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