これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2016/09/09 狭い了見

私が直接に確認したわけではなく、あくまで伝聞、噂に基づく話である。 我が北陸医大 (仮) のある某県でも、全国の他の地方と同様に、医師が不足している。 そこで県当局は、研修医を含めて県内の医師が他県に流出することを防ぐべし、という方針をとっているらしい。 我が北陸医大にも、そのような県の意向が伝えられている、という話を聞いたことがある。

実に、了見が狭い。器が小さい、と言っても良い。 たとえば名古屋大学医学部の卒業生にとって、仮に北陸医大を研修先、あるいは三年目以降の就職先として検討した際、最も気になるのが 「一生、この県で過ごさねばならなくなるのではないか」という点であろう。 現状として、この県の医学・医療は、日本の中で先進的な地位を占めているとは言い難い。 若い医師や医科学生が、この県で一生を過ごすことに抵抗を感じるのは、当然のことである。 私だって、もし仮に北陸医大に対して耐え難い不満が生じた場合には辞めてやる、それで困るのは北陸医大の方であって、 私が不利益を被ることはない、という自信と覚悟がなければ、北陸医大に来ることは躊躇したであろう。

逆なのだ。 研修が終わったら、全国どこでも、好きな所に行くが良い、それで通用するだけの質の高い研修を提供する、という態度を示してこそ、人は集まるのである。 京都大学や東京大学、あるいは聖路加国際病院などに人が群らがるのは、そういう理由である。 医師の囲い込みなどを図れば、かえって、この県から医師はいなくなるであろう。

県の意向はともかく、北陸医大としては、どういうつもりなのだろうか。 全国どこに行っても通用するだけの質の研修を、提供する意思はあるのだろうか。それとも、県内の医療を支えられれば充分だと考えているのだろうか。 北陸医大では、定期的に、研修医と病院長の懇談会が開催されている。次回には、このあたりのことを病院長に問うてみようかと思う。

2016.09.10 語句修正

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